鑑定 -基礎知識-
絵画の基礎知識、鑑定編です。
絵画には、本物、偽物があります。偽物は「にせもの」「ぎぶつ」という言い方をします。では、この本物、偽物の判断は、どのようにするのでしょうか?まず、素人ではわかりません。私が知っている中でも、偽物は常に進化をしているので、偽物と判断しにくい物が多くあるからです。それを、どう判断していくのでしょうか?
■自分で判断
簡単にすぐできるのは、自分で判断できます。偽物と言っても様々です。例えば、片岡球子の作品に、横山大観の落款・印譜があったら偽物です。片岡球子の作品はわかりやすいので、簡単です。川合玉堂が、切絵をしていても、偽物です。これも、わかりやすい例です。わかりやすい例ばかり集めいていますが、難しい例には、もちろん対応できません。川合玉堂が、クチ堂時代に、動物を描いていたら、どうでしょうか?川合玉堂は、風景作家なので、動物の作品は少量です。しかも、クチ堂時代に描いていることは、なくはないと思うのですが・・・。というレベルの話です。作品・作風を覚えるのはもちろんのこと、落款・印譜も覚えなければなりません。落款で時代を判断することが多いのですが、印譜を交えると、より精度が増します。話をまとめると、自分での判断は難しいと言えます。
■鑑定に出す
自分で判断が難しい作品は、鑑定に出すことができます。鑑定は、ほとんどの作家の鑑定を東京美術倶楽部で行っています。日本画は毎月9日、洋画は毎月25日に鑑定をします。費用は、6万円(鑑定料3万円、登録手数料2万7千円、手数料3千円)です。一部鑑定料が異なる作家もいます。
それと、横山大観は、横山大観記念館、加山又造は加山哲也氏、奥田元宋は奥さんの奥田小由女氏と作家の血筋や、記念館などの作家にちなんだ場所でも鑑定を行っている場合もあります。料金は、東京美術倶楽部と違って、様々です。
■鑑定書
鑑定を一度通過した作品は、登録され鑑定書が発行されます。これがあれば、本物ということが断定され、偽物かどうか迷わなくても、本物ということになります。ですが、鑑定書の偽物も出回っていたり、鑑定書は本物、作品は偽物ということもあるので、注意が必要です。
■登録
作家によっては、登録番号があります。登録番号も鑑定書の変わりになります。登録番号とは、作家の子孫や関係者などが鑑定をしている所が発行している番号です。これは、通し番号になっていて、本物と判定があった場合、番号をつけます。この番号を元に、発行者に問い合わせをすると、画題などの基本的な情報を教えてくれます。
■共箱・共シール
絵画には共箱・共シールという物があります。共箱・共シールは、主に日本画に存在します。まず、共シールというのは、作家が書いたシールです。このシールは絵画の裏に貼り付けておくのがルールです。このシールには、「画題」「作家名」「印譜」が書いてあります。このシールを見ることで本物・偽物を判定できます。もちろんシールがない作品もありますが、シールがない作品は、やはり偽物の疑いが強いです。気がついた方もいらっしゃると思いますが、作品にも落款・印譜があります。共シールと合わせて見ることで、判定が可能です。ですが、作品と共シールに同じ落款・印譜をしない場合があります。これは、同じではないから偽物と判断するのではなく、両方とも本物だったら、作品が本物という二重の信用があるわけです。もちろん、両方の落款・印譜を読み取る力は必要になりますが・・・。
共箱は、軸の作品にあります。箱の表に「作品名」裏に「落款」「印譜」があります。これも、共シールと同じ効果があります。やはり、共箱でないと、偽物の疑いが強くなります。
ただ、この共シール・共箱は日本画に多いルールです。洋画の場合は軸は基本的にないですし、共シールも、あまり見かけません。洋画の場合は、裏の板を外し、キャンパスの裏に直接「作家名」「画題」「大きさ」を書き込むことが多いです。これを確認しないと、やはり偽物の疑いは強くなります。
■軸・額
一概には言えませんが、軸・額でも判断ができます。例えば、1000万円の作品を1000円の額に入れますか?まず、入れないと思います。画廊勤務の私から言わせれば、その時点で偽物と判断しても良いぐらいです。理由は、絵画を売るのに、額・軸はその絵に合わせて、良い物を使用します。額だけで数百万円ということも珍しくありません。良い作品には良いコーディネートをさせ、作品自体の価値や豪華さ、見栄えを良くします。家宝にして何十年の自宅の蔵にしまってあったなら別ですが、画廊などから買う絵画で、額・軸が汚いなどということは、まずありえません。偽物と疑うべきです。